SK-2の知識
テキサス州のエトナ社の契約条項113には、「医師は保険加入者に対して、治療が、費用支払いの点から、順位の劣るものとなることを暗に知らせてはならないとあり、地元医師会が検討するところでは、この文言では医師たちが保険会社が損を被るかも知れないと思われるときに、正直に患者の治療に尽くすことを思いとどまるかも知れないということになる。
このほかにも、エトナ社が治療コスト管理のために医師に求めるHMO患者の治療報告がうるさいこと、そして、そのうえでエトナ社のHMOから医師への支払いがいつも遅かったことも重なって、とうとう、医師グループはエトナ社のHMOの加入者八〇〇〇人を診る契約を破棄した。
そうしたところ、マネジドケア業界でも希なことだが、エトナ社は、HMO加入者を拒否したダラスの医師に対して、自社の全部の医療保険加入者がそれらの医師にかかると保険給付しないとしたわけである」。
さらにこのほかにも、マネジドケア医療保険会社が積極的な吸収合併をくり返した結果、たとえば情報処理部門が業務拡大に追い付けず、加入者たちに誤った保険料を請求して混乱を起こしていることも最近では社会問題となって報道されている。
そこでは、経営体制のお粗末さへの非難だけでなく、そのような吸収合併に際して巨額なお金が出ており、それら資金は元をただせば加入者たちに対する医療費の出し渋りによって稼いだものではないか、との非難の意味も込められている。
そしてまた、マネジドケアの方法論はPBMの場合のように医薬品の流通にも影響を及ぼしており、それが仕事を奪われた町の小さな薬局の恨みを買って、マネジドケアヘの反発に加わるといったように、事は単純ではない。
このような背景があって、九八年十一月の米国中間選挙では、入れ替えのある州知事の選挙と上下院議員選挙で、民主党と共和党の双方が、選挙キャンペーンでマネジドケアを規制する提案を行っている。
加入している保険会社のマネジドケアに不満があるときには、患者は第三者機構に申し立てて医療給付の判断を仰げるというものや、加入しているHMOの医療ネットワークの中に患者が必要とする専門医がいないときには、余分な自己負担をせずに、ネットワーク外の専門医にかかれるというもの、あるいは、患者の疾病にある一定の条件が揃っていればゲートキーパー医師を介さずに直接、医療ネットワーク内の専門医にかかれる、といったように、HMOが引き起こした医療費出し渋り問題について、具体的に規制する内容を列記している。
B教授の世論調査は研究者の間でも評価が高いので、この断り書きがなくとも、HMOのプロパガンダを引き受けるようなことはないと思う。
しかしながら、時期が時期だけにこの断り書きが妙に生々しいと感じるのは私だけではなかったと思う。
調査は、電話アンケート専門の会社に依頼したもので、九七年八月から九月にかけて、全米一二〇四人の成人にコンタクトして調べたものである。
ただ、ここで困ったのが、アンケートに答えてくれる人たちのたいていが、自分たちがどの種類の保険に入っているか、つまり、マネジドケア医療保険の加入者であるか否かについてよく知らないという問題であったという。
このことからも、つい最近まで米国民の間でマネジドケアがどの程度の認知を得ていたものか想像いただけるものと思う。
マネジドケアがこの名前で社会問題化したのは、本当につい先頃の話なのである。
話をB教授の世論調査に一戻すと、この調査では六五歳未満で保険に入っていると答えた人には、自分たちがどのような保険に入っているかについて明らかにするために追加の質問をしたという。
すなわち、医師は保険会社が出してくるリストから選ぶのか?そのリストにないドクターについては自己負担額が多くなるのか?プライマリケア医や医療グループを選択することになっているのか?専門医やネットワーク外の医師に診てもらう前に紹介状をもらわなければならないのか?といった事柄について問い尋ね、マネジドケア医療保険なのか否かを判じたという。
同教授は、このようなマネジドケア医療保険の特徴すべてを備えた保険に加入している回答者たちを「重装備」のマネジドケアに、また、すべてではないが、いずれかの特徴を備える保険に加入している回答者たちを「軽装備」のマネジドケアに分類している。
また、残りの三%の回答者たちについては、いずれの特徴も持っていないとして「従来型」保険に分類している。
いずれもがマネジドケア医療保険の現状に対する世間の反発があることを暗に承知して調査したことに他ならないからである。
その調査結果は「マネジドケア保険の評判は、善かれ悪しかれ、加入者自身もしくは家族や友人からもたらされるのが七割近くを占め、マスコミの情報は二割強」という。
そして、マスコミの情報は過半数が公正だと考えており、また、良い情報も悪い情報も共に報じていると考えられている。
そのうえで、HMOを含むマネジドケア医療保険に対する政府の介入・規制について、賛成と反対、そして「わからない」とするのが五函四二で、必ずしも圧倒的多数が規制を望んでいるわけではないというのが、九七年秋の調査報告であった。
B教授は米国中間選挙のあった翌九八年にも、同様な全米調査を行っている。
時期は、選挙の少し前の八月に行い、翌九月中旬に報告書が発表されている。
内容は大きく二つに分かれ、ひとつは九七年調査との比較でマネジドケアに対する意識調査を行い、もうひとつは患者の権利法案とそれに対する政党の取り組みに対する感想を聞いている。
いうまでもないが、六五歳を超えるとメディケア制度により必ず医療保険に入っている。
おそらくは、この時点ではメディケア・マネジドケア保険の問題は未だ大きくはないと考え、また、高齢者へ追加質問を付す難儀を考えて、ここの保険分類調査から外したものと思われる。
病くた幅医答えた人の割合がずいぶんと増えている。
これは患者の主観の問題ではあるが、患者が見ていた医療のクオリティというのが多分に医療へのアクセスであることが、HMOが加入者に対して行った制限内容からみてとれて興味深い。
つまり、医療サービスの本質において、HMOがクオリティを下げたかを問うたのは「病気に対する医療のクオリティが下がったか否か」という項であるが、これに対しては両年次の調査でほとんど差はない。
それゆえ、医療保険がカバーする医療のクオリティをどの尺度で見るかを暗示しているのが、この二つの問いである。
前者は「消費者満足度」を、後者は「医療資源効率」の立場で見た医療のクオリティといえよう。
HMOの医療費出し渋り問題が加入者の不信感を急速に拡大させていることが〈図413〉から分かる。
その結果は、九七年秋の調査報告と較べ、HMOを含むマネジドケア医療保険に対して政府の介入に賛成する人が明らかに多数となっている。
そして、具体的に話題になっている患者を保護する法律についての賛否を問うと、賛成する人がさらに増える。
者がHMOなどマネジドケア医療保険に対して訴えを起こす道をかなり狭めることとなり、結果としてそれらの事業は保護された。
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